りんたの後輩、あゆちゃんの先輩にあたる、野球部員です。
幾日か前の野球部の保護者メーリングリストで、指を負傷したので水曜日の練習を休みますとの連絡は受けていました。
その後の経過が思わしくないのでしょうか?
今週末にはカップ戦、今月下旬には県大会を控えているチームには、T君の存在は何としても欠かせません。
にこやかにお母さんと来院したT君。
その左手の親指に包帯が巻かれています。
「じゃあ、まずは話をきかせて。」
ベンチに座ったT君とお母さんにお茶を勧めながら問診を開始します。
「月曜日の6時間目にドッチボールをしていたんですけど・・・。」
ボールを受けようとした際に、仲間の6年生とボール奪い合うような形になって体が重なり、飛んできたボールを左の親指の先に当ててしまったのだとか。保健室では病院に行くように勧められたのだけれども、翌日の球技大会に出たかったのと、さほど大したケガではないだろうと考えてそのまま帰宅してしまったというT君。
その夜、お風呂から出てきたT君の手を見て
「どうしたの、その手。普通の腫れ方じゃないよ。」
と驚いた母さんが、翌日整形外科に連れて行ってくれました。
レントゲン検査の結果、「はっきりとした骨折は認められないから」と医師は球技大会への出場は許してくれたそうです。
なるほど。
包帯と副子という金属製の固定器具を外して、りんたパパがT君の左手を見てみると、幾分腫れは引いているということでしたが、内出血の跡と腫れがまだ残っています。
親指の第一関節の横にも熱感が。
「ここが痛いよね。」
「あ、押されると痛い。」
関節の前後の指の骨を動かしてみると、動きが緩くて不安定な感触が伝わってきます。
どうやら、関節を固定する靭帯に傷がついている可能性があります。
T君とお母さん、二人に見立てを説明して、りんたパパは手早くお灸の準備を始めました。
傷ついた組織の再生を促すには、お灸が大変有効なのです。
米粒半分ほどの大きさにひねったもぐさを肌に立てて直接燃焼させる、透熱灸というお灸を3か所ほど行います。
「あれ、もう終わったんですか?」
「そう、次は氷だよ。」
ビニール袋に3p角ほどの氷を入れて、低温で行うアイスキューブマッサージを行います。
指のカーブに沿って、そっと氷塊をスライドさせると、徐々に指の熱感と腫れが引いていきます。
「はい、おしまい。」
「お母さん、見て。指細くなった。」
「本当だねぇ。」
寝ている間にも、指に外力がかかると傷が悪化する可能性があるため、今夜は副子をつけて休むように伝え、この日の施術は終了しました。
突き指は元気な小学生や、スポーツを行う方たちにはなじみのケガで、つい軽く見られがちな傾向にあります。
とは言え、ちゃんと検査を受けてみると、指を骨折していたり、靭帯を痛めてしまっているなど、重篤な症状に至っているケースも少なくありません。
ケガをした直後はちゃんとRICE処置(らいすしょち:安静・冷却・圧迫・挙上)などの手当てをして、なるべく早く医師の診察を受けましょう。
冷却は氷水を用いて行います。保冷剤を直接あてがうのは止しましょう。
氷が手近に無い場合は、水道水などの清潔な流水で冷やすことも有効です。
土曜日の晩に再診の予約を入れて帰ったT君とお母さん。
お灸の効果と、若いT君の回復力に期待しましょう。
大丈夫、きっと日曜日のカップ戦には間に合うよ。
それでは、また。
りんたパパでした。